院長ブログ

2019.10.10

三井記念病院 認知症疾患医療センター 第1回事例検討会 2019年9月3日

座長 認知症疾患医療センター長 中嶋義文

第一部 治る認知症 慢性硬膜下血腫の病態と三井記念病院における治療実績 脳神経外科 中口博 先生

第二部 「言語処理の神経回路」 三井記念病院 神経内科 櫻井靖久 先生

今の若い医師たちは研修医を経験してきていますので、慢性硬膜下血腫は医者になってすぐに経験していることでしょう。

私が、医者になったのは35年前で、私は泌尿器科を専攻しましたので、毎日毎日、泌尿器科疾患の対応に明け暮れていました。

墨東病院にいたころは、すべての泌尿器科手術を執刀していました。(前立の先生は滝汗でしたが、後年私もその意味がわかりました。)そんなわけで、慢性硬膜下血腫の患者さんを実際に見たのは、40歳を過ぎてからでした。古い話で、私が館山の慢性期病院に勤務していたころ、なぜ入院となったかは忘れましたが、その患者さんが脱院したのです。警察にもお願いして発見したのは翌日であったと思います。その方が、慢性硬膜下血腫だったのです。館山で姉と二人暮らしで、お二人とも90近い年でした。亀田メディカルセンターに紹介して手術をしていただき無事完治しました。その後は、高齢者が頭部外傷で外来受診したら、受診時と縫合1か月後に頭部CTを撮り血腫の有無を確認していました。100例程、頭部外傷を対応して慢性硬膜下血種が2例水腫が1例ほどあったかと思います。

さて、第一部 中口博 先生の講演では、硬膜下血腫成因、穿頭血種洗浄ドレナージ術、再発を繰り返す血種に対する考察が述べられました。

また、慢性硬膜下血腫は春に多いとのことで、これは冬に転んで春に血腫ができるということなのです。やはり、冬場は身体が固く転倒しやすい時期であり、高齢の方は注意必要であることを再認識しました。

第二部 櫻井靖久 先生 ご講演の言語処理の神経回路2回路説は、先生が長年にわたりご研究をされてきた分野とのことです。櫻井先生ご自身が「かなりマニアック内容です。」と言われていたように、「はあ、こういうものか。」という理解にとどまりました。

2019.09.08

新宿抗凝固セミナー 2019年7月30日 国立国際医療研究センター病院

「NCGMにおける血栓症管理の現況」

国立国際医療研究センター病院 第二循環器内科 医長 原 久男 先生

「がん患者における静脈血栓症の治療  Onco-Cardiologyの役割」

大阪国際がんセンター 腫瘍循環器科・成人病ドッグ科 主任部長 向井 幹夫 先生

9月に入り若干涼しさも感じられるようになったと思いきや、昨日、9月7日は、台風の影響でまた夏に逆戻りしたような暑さでした。汗をかくような陽気で気をつけなければならない疾患に深部静脈血栓症(DVT)があります。ふくらはぎの深部にある静脈に血の塊(血栓)ができる疾患で、血栓がはがれて肺静脈へ流れると血栓は肺静脈で成長し肺梗塞を引き起こし命に関わる危険な疾患です。エコノミークラス症候群や震災の被災者が狭い自動車の中で何日も歩かないで過ごしたために亡くなってしまう原因がこの血栓症です。

ピルを服用していた女性に大腿静脈~外腸骨静脈にいたる巨大な血栓ができていたのを単純CTで見つけた経験はあります。ピルは血栓症のリスクファクターですので容易に疑うことができました。

7月30日の講演会で血栓についての話がありましたので、今回は、そのようなリスクファクターのない方に生じた深部静脈血栓症の自験例について述べます。

患者様は、30才代の男性です。生来至って健康で、特に既往歴はありません。服薬している薬もありません。そのような方が、左ふくらはぎ痛のために私の外来を受診してきました。特別、ふくらはぎを損傷するようなことはしていないとのことです。診察所見ですが、皮膚に発赤、熱感は認めません。ふくらはぎを握ると明らかに痛みを訴えます。若干左ふくらはぎが右ふくらはぎより腫れている印象がありました。どう考えますか?ただの筋肉痛ですか?皮膚には所見がありませんので皮膚由来の痛みは否定して良さそうです。

このようなとき私は、こう考えます。誰でもこのんで医療機関には行きたくないものです。仕事もあるし、待たされたりもするし、なにより面倒くさいからです。それなのに、医療機関に来たからには、ただの筋肉痛ではないものを患者様自身が感じているからだと考えます。しかもふくらはぎを損傷するようなことはしていないと言っております。したがって、根拠もなく筋肉由来の痛みと決めつけるわけにはいきません。しっかりと調べる必要ありと判断しました。

皮膚由来の痛みは身体所見から否定しましたから、残るは筋肉、血管、神経、骨いずれからの由来かを調べるわけですが、検査手段としてMRIを選択しました。深部静脈エコーを行う技量があればエコーも検査手段となりますが、技量に左右されずに調べられるMRIを無難に選択しました。

結果は、下腿の静脈が異常に拡張し、T2で若干腓腹筋が高信号でした。DVTと診断するに十分な所見です。早速、都立墨東病院救急に治療をお願いしました。

後日、都立墨東病院から情報のフィードバックがあり、血栓は小さいけども肺静脈にも認めたとのことで、ワーファリンを投与し経過をみているとのことでした。また、患者様は、前日、暑い中、汗をだらだらかきながら野球のキャチャーの姿勢で庭に水をまいていたとのことで、それで血栓ができたのだろうとのことでした。

汗をだらだらかくことで、血液は濃縮して固まりやすくなります。また、キャチャーの姿勢を長く続けたためふくらはぎで血液の流れが悪くなり固まりやすくなります。庭に水をまいたことが原因とは患者様も思わなかったことでしょう。もし、ただの筋肉痛と診断をして湿布でも処方して終わっていたら、肺にも血栓があったのですから、最悪の事態になった可能性もあったなと思われるケースでした。

血栓のリスクファクターのない方でも状況によっては、血栓症を発症します。リスクファクターを有する方は注意してください。

2019.09.05

2019年8月30日 日常診療に役立つ病診連携講演会~リウマチ、肝疾患を中心に~

都立駒込病院 膠原病科 医長 瀬戸口 京吾 先生

「日常診療で診るリウマチ疾患について、当科との医療連携をテーマに」

都立駒込病院 肝臓内科 部長 木村 公則 先生

「肝機能異常を見つけたらどうすべき?肝疾患における医療連携の活用~C型肝炎・NASHを中心に~

病診連携とは何か!

私の先輩医師の言葉をお借りすると、「当医院は患者様の事を第一に考え、簡単な病気を早く治し、難しい病気は大病院に早く送ることを基本に考えています。」

かかりつけ医、プライマリーケア医の役割は、まさに先輩医師の言葉通りです。関節リウマチは、昔の様にステロイドで痛みだけを取っていればよい時代ではありません。ステロイドで痛みをとっても、関節の変形は防げませんので将来のQOLは大きく低いものとなってしまいます。

今の時代のリウマチ治療は、MTX、生物製剤といった治療薬を用いて関節を変形させないことが主目的の時代です。MTXや生物製剤は使用経験の多い医師に治療を任せて、我々、プライマリケア医はリウマチ疾患を疑う目を持っていればよいのです。見落とさないということが大事です。早期に治療を開始すれば関節の変形が少なくて済むからです。

治療内容に変化があれば、当然、診断基準も変わってきます。ACR/EVLAR分類基準2010に変わりました。治療を早期に行うためには従来の診断基準はそぐわなくなってきたからです。

続いて、NASHですが、学生の頃から体重が+10kg以上の人は予備軍だそうです。NASHはUSでは鑑別ができないので血小板が15万以下の場合は2泊3日で肝生検が必要なようです。NASHの治療薬はなく減量が大事であるとのことです。

C型肝炎は、飲み薬を4~8週間服用すれば治る時代になりました。高齢者、非代償性肝硬変であっても治療適応とのことです。ただ、治療でウイルスがなくなっても発がんの可能性はあるため定期的なUSは必要とのことでした。また、DMの方におきましては、ALT30は高値とのことですので注意が必要です。

2019.08.12

JACO東京メディカルセンター医療従事者研修会「急性冠症候群を見逃さない」

令和元年7月24日の講演会です。急性冠症候群は時間との戦いです。初期治療としてPCIが施行された患者における病院到着からPCI施行までの時間と死亡率の関係は、60分以内にPCIが施行された患者は死亡率4.2%ですが、151~180分の間にPCIが施行された患者は死亡率8.7%です。実に倍以上の差があります。

JACO東京メディカルセンターでは、2018年1月からは、DTB平均102.3分 平均発症再灌流時間225.0分とのことです。
しかし、ACSの診断を見逃してしまったり、患者様がすぐに病院を受診しない場合は当然予後は悪くなります。

ACSの診断を見逃す場合として

1,心電図を取らなかった→非典型的な症状
・高齢
・女性
・糖尿病

2,心電図を見慣れていない
・徐脈症例
・下壁、後壁梗塞
3,初期対応が循環器科医でない
4,病態が複雑な場合
・VT/VF/AV blockを合併
患者様の受診が遅れる場合として
  • ・特にいつ行ってくれと言われなかった/言われたのを忘れた
  • ・すぐに行ってくれとは言われなかったから用事を済ましてからきた
  • ・そんなに深刻だとは思わなかったから仕事を済まして夕方(当直帯)になってからきた
  • せっかくACSを疑ってもすぐに医療機関に行かないために予後が悪くなるのはなんとももったいない話です。気をつけなければなりません。
また、高齢者のACSは無痛性の場合も多く80代では二人に一人は胸痛が出ないとのことです。吐き気、元気がない、倦怠感がACSの症状である場合もありますから心電図を積極的に取る必要があるとのことです。
 
しかし、連続的に心電図を取っていてもAMIを見逃す可能性があり、トロポニンもAMIを否定することはできないので、ACSを疑ったならば、とことん疑うことが必要でしょう。ACSを疑った患者様がACSでないことは恥ではなく、ACSを見逃すことが恥と心得るべきでしょう。
2019.08.11

令和元年7月17日 三井記念病院 地域連携フォーラム「膠原病、リウマチ内科が存在する意味」

7月の講演会です。演者は、三井記念病院膠原病、リウマチ科 医長 大島美穂 先生です。

本公演の趣旨は、多彩な症状を呈する膠原病を疑うきっかけを掴んでもらうための実践的な内容を伝えるというものです。
楽しみです。

膠原病の患者様が、はじめから膠原病を疑って三井記念病院を受診することは極めてまれなことです。なぜなら、症状がや所見が、中枢神経系、眼、口腔、鼻腔、毛髪、皮膚、リンパ節、唾液腺、呼吸器、心血管系、消化器、腎、血液、脾臓、筋骨格系、泌尿生殖系、四肢など様々な場所に出現するため何かを受診してよいかわからず、ほぼ全て診療科を受診した挙句の果て三井記念病院を受診するそうです。

膠原病は、問診と身体所見で相当な情報が得られるのだから、膠原病に特徴的な所見や症状を知っていれば、膠原病非専門医でも少なくとも膠原病を疑うことはできるでしょう。後は三井記念病院膠原病、リウマチ科につないでくれればOKですという話の内容でした。

膠原病治療は、昔の様に、鎮痛剤とステロイドだけしかない時代ではありません。免疫抑制剤、生物学的製剤が出現してから治療が大きく進歩しました。子供を出産することも可能になってきました。それだけ治療の質が上がってきましたが、安心して治療を受けるには治療経験の豊富な医師にお願いすることが必須です。ここに、「膠原病、リウマチ内科が存在する意味」があります。

あとは、膠原病に特徴的な所見を顔、頭、皮膚、眼、口、爪、足、筋骨格系、肺、腎、大血管に関してそれぞれ大変詳しく説明していただきました。内容は非常に詳しいので割愛します。
泌尿生殖系にも膠原病の所見症状は現れることがありますので改めて注意深く診察することの必要性を感じました。

2019.08.02

令和元年6月28日 循環器フォーラム

昨日に引き続き連続で循環器の講演会に行ってきました。

三井記念病院 循環器内科 小池秀樹 先生は、三井記念病院 循環器内科に紹介された心房細動の患者様に対して行われた治療とその経過を通して、カテーテルアブレーションについて循環器非専門医にもわかりやすく説明してくれました。

また、三井記念病院 循環器内科 阿佐美 匡彦 先生は、三井記念病院 循環器内科に紹介された2名の弁膜症の患者様に対して行われたカテーテル治療とその経過を通して、循環器領域における様々なカテーテル治療の説明をしてくれました。非常に密度の濃い内容でしたので、20分ではなく50分位の講演時間で話が聴けたらいいなと思われました。

患者様を紹介する際は、「心雑音がある」「脈が不整なようである」それだけ書いてあれば後は任せてくださいという非常に頼もしい言葉をいただきました。

2019.08.02

令和元年6月27日 ハートチームが掲げる心不全治療と連携 虎の門病院

令和元年5月1日より、虎の門病院が新病院となってから、初めて訪れました。

講演会は1階の講堂で行われましたので1階しか見てませんが、すべて見て回るには相当の時間がかかりそうです。

「新装開店!虎ノ門エコー室」と題した、太田光彦先生の講演では、虎の門病院で行われているエコー検査についての紹介がありました。

正直、感動しました。まさに、これこそ最新式と呼ぶにふさわしい超音波検査機を用いて、検査時間30分(以前は15分であったとのこと)かけて、標準45画像撮影するとのことでした。

検査ベッドも心エコー用に工夫されていました。

また、検査室には心エコーのエキスパートである太田光彦先生が常駐しているとのことで、すごいエコー室が虎の門病院にできたものだと感心いたしました。

また、「低侵襲時代の弁膜症治療」と題した、循環器センター外科 田端実先生の講演では、外科医はカテーテル治療も行うが、それ以外に手術というオプションを持っているので治療法を選択する際にバイアスがかからないという話が印象に残っています。

虎の門病院循環器センターは外科、内科がチームとして治療にあたっているので、患者様を紹介する際は、「循環器宛」で良いとのことでした。「その時代時代になしうる最良の医療を提供する」虎の門病院の理念ですが、講演会を通してその意気込みを感じることができました。

 

2019.08.02

令和元年6月19日 JCHO 東京新宿メディカルセンター 医療従事者研修会

インターネットで簡単に情報を入手できる時代ですが、臨床医にとって大事なことは多くの情報を知っているだけでは不十分で、情報を経験というフィルターでろ過する必要があります。経験で裏打ちされて初めてその情報は使えるものとなります。

今回の研修会は、日常、眼科疾患を診療する機会のない医師にとっては、膨大な診療経験を持つ眼科エキスパートというフィルターでろ過された情報を得られるありがたい機会なのです。一つの情報を提供するために、どれだけ多くの情報がろ過されことでしょう。

涙道疾患についての講演は、まさにエキスパートならではの内容でした。涙道について考えた回数が5本の指で足りてしまう私に、涙道の奥の深さを教えてくれるに十分な内容でした。

また、緑内障についての講演もエキスパートならではの内容でした。

通常、緑内障といえば眼圧があがり、視野欠損が症状としてあらわれるという認識でしたが、実際は正常眼圧緑内障が多く、また、明らかな視野欠損はよほど進行しなければ現れないということでした。診断は、眼底所見によるところが多く、専門医でなければ判断は難しそうです。治療は、点眼薬が主体で病状にあわせて、作用機序の異なるものを組み合わせて使用し、副作用として、アレルギー性結膜炎や目縁の接触性皮膚炎に注意が必要とのことでした。手術についても説明がありましたが、どうも手術で根治するというわけにはいかないことが多いようです。

2019.08.02

令和元年6月11日 秋葉原 脂質治療連絡会議

2019/6/11、三井記念病院で講演会があり出席しました。

東海大学 伊苅教授による、PCIの歴史、ikari catheter開発、心血管event1次予防、2次予防それぞれにおいてのLDL-Cの意味など非常に有意義な話を面白く聴かせていただきました。

また、三井記念病院 小宮山先生は、FFRctについて大変わかりやすく説明がありました。非常によい講演でした。

2019.08.02

平成31年4月24日 日本医科大学主催「肝疾患を考える会」

平成31年4月24日、「肝疾患を考える会」に出席してきました。

講演Ⅰ「肝臓外科手術の実際、安全な肝臓外科手術を目指した様々な取り組み」

講演Ⅱ「進歩した肝炎治療戦略」

講演Ⅲ「肝癌につながる怖い脂肪肝」

これまでは、非アルコール性脂肪肝はすべてNASHと認識していましたが、今回の講演会で正しく認識できることができました。

掲載画像では、見づらいのですが、画像の内容は以下の文章です。

1,本邦では約2000万人にNAFLDを認め、そのうち10~20%が進行性のNASHである。

2,特に、メタボまたは糖尿病のNAFLDでは、高度線維化、発癌のリスクが高く、線維化マーカー(FIB4indexなど)Fibroscanなどによる非侵襲的線維化評価が望まれる。

3,治療は、まず生活習慣の改善を指導すべきである。さらに、NASHと診断されたケースは、状況に応じて薬物療法を考慮すべきである。今後、新規薬剤の開発、治験が望まれる。

2019.08.02

三井記念病院地域連携フォーラム「男性排尿障害の診断と治療 クリニックでどこまでできる」

平成31年4月17日、タイトル「男性排尿障害の診断と治療 クリニックでどこまでできる?」三井記念病院で行われた講演会に参加してきました。診療が独りよがりの考えに陥らないようにするために講演会はできるだけ参加するようにしています。

高齢化社会になり排尿障害の患者様は増えています。そして、排尿障害の薬もいろいろ開発されているので、手術をしなくても症状が改善されるようになってきています。

しかし、手術と違って服薬はずっと継続しなければならないので、三井記念病院 泌尿器科外来は大変混雑することになり医師も患者様も疲弊してしまいます。

前立腺癌や前立腺肥大症の手術適応を見誤らなければ、男性排尿障害の診断と治療はクリニックで全てできる!」ので、投薬で経過を見ている男性排尿障害の患者様は地域の医療機関で十分対応できるということです。

昔は、エビデンスレベルの低い薬しかなくて、毎週、前立腺肥大症の手術をしていました。

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